大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

前橋地方裁判所 昭和62年(わ)504号 判決

本店所在地

群馬県太田市大字吉沢一七四八番地

山恵鉄工株式会社

右代表者代表取締役 村木一夫

本籍

群馬県太田市大字吉沢一七四五番地

住居

同県同市大字吉沢一七四八番地

会社役員

村木一夫

昭和二三年四月二六日生

右の者らに対する法人税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官半田秀夫出席のうえ審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人山恵鉄工株式会社を罰金一〇〇〇万円に、被告人村木一夫を懲役一〇月にそれぞれ処する。

被告人村木一夫に対し、この裁判の確定した日から三年間右刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人山恵鉄工株式会社は、群馬県太田市大字吉沢一七四八番地に本店を置き、トラッククレーンのブーム及び同附属品の製造・販売を営業目的とするもの、被告人村木一夫は、右被告会社の代表取締役として同社の業務全般を統括しているものであるが、被告人村木一夫は、被告会社の業務に関し、法人税をほ脱しようと企て、売上の一部を除外して簿外資産を蓄積し、また、機械の取得時期を繰上げて特別償却費を計上するなどの不正の方法により所得の一部を秘匿したうえ、

第一  昭和五八年四月一日から昭和五九年三月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が四三〇八万一五五三円で、これに対する法人税額が一七一三万二七〇〇円であるのに、昭和五九年五月三一日、同県館林市仲町一一番一二号所在の館林税務署において、同税務署長に対し、総所得金額が八二六万七八六九円で、これに対する法人税額が二五一万〇九〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により被告会社の右事業年度における正規の法人税額一七一三万二七〇〇円と右申告税額との差額一四六二万一八〇〇円を免れ、

第二  昭和五九年四月一日から昭和六〇年三月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が二六七六万二七九七円で、これに対する法人税額が一〇五八万九七〇〇円であるのに、昭和六〇年五月三一日、前記館林税務署において、同税務署長に対し、総所得金額が二二八万二四四五円で、これに対する法人税額が六九万三一〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により被告会社の右事業年度における正規の法人税額一〇五八万九七〇〇円と右申告税額との差額九八九万六六〇〇円を免れ、

第三  昭和六〇年四月一日から昭和六一年三月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が三一五六万〇三五三円で、これに対する法人税額が一二六五万〇一〇〇円であるのに、昭和六一年五月三一日、前記館林税務署において、同税務署長に対し、総所得金額が八一九万三〇一八円で、これに対する法人税額が二五三万二二〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により被告会社の右事業年度における正規の法人税額一二六五万〇一〇〇円と右申告税額との差額一〇一一万七九〇〇円を免れたものである。

(証拠の標目)

判示事実全部について

一  被告人村木一夫の当公判廷における供述

一  同被告人の検察官に対する供述調書

一  同被告人の大蔵事務官に対する質問てん末書七通

一  村木安江の大蔵事務官に対する質問てん末書一一通

一  栗田誠の大蔵事務官に対する質問てん末書二通

一  館林税務署長作成の証明書

一  大蔵事務官作成の簿外売上調査書、簿外原材料仕入高調査書、簿外外注費調査書、水増減価償却費(製造原価)調査書、水増消耗品費(製造原価)調査書、簿外交際接待費調査書、簿外雑費(一般管理費)調査書、簿外受取利息調査書、簿外分配金・償還益等調査書、簿外仕入割引調査書、事業税認定損調査書及びその他所得調査書

判示第一の事実について

一  大蔵事務官作成の昭和五八年四月一日から昭和五九年三月三一日までの修正損益計算書

一  大蔵事務官作成の昭和五八年四月一日から昭和五九年三月三一日までの脱税額計算書

判示第二の事実について

一  大蔵事務官作成の昭和五九年四月一日から昭和六〇年三月三一日までの修正損益計算書

一  大蔵事務官作成の昭和五九年四月一日から昭和六〇年三月三一日までの脱税額計算書

判示第三の事実について

一  大蔵事務官作成の昭和六〇年四月一日から昭和六一年三月三一日までの修正損益計算書

一  大蔵事務官作成の昭和六〇年四月一日から昭和六一年三月三一日までの脱税額計算書

(法令の適用)

被告人らの判示各所為は、各事業年度毎に法人税法一五九条一項(被告会社についてはさらに同法一六四条一項)に該当するところ、被告会社については情状にかんがみ同法一五九条二項を適用し、被告人村木一夫については所定刑中懲役刑を選択することとし、以上は各被告人について刑法四五条前段の併合罪であるから、被告会社については同法四八条二項により合算した金額の範囲内で罰金一〇〇〇万円に、被告人村木一夫については同法四七条本文、一〇条により犯情のもっとも重い判示第一の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で懲役一〇月にそれぞれ処し、諸般の情状にかんがみ、被告人村木一夫に対し同法二五条一項を適用してこの裁判の確定した日から三年間当該右刑の執行を猶予することとする。

(量刑の事情)

本件は三年の期間にわたって不正な方法により法人税をほ脱したものであるところ、その犯行は別法人名を使うなど各種の方法を用い計画的になされたもので、ほ脱率はいずれも極めて高く、脱税額も高額であって、被告人らの所為は税負担の公平を害し、善良な国民の納税意欲を阻害するものとして厳しい非難を免れないものであり、検察官求刑程度の科刑はやむを得ないところであるが、ほ脱した税金もすべて納付済みであること、被告人村木一夫は当初より犯行を素直に認めており、反省の情が顕著に認められること、そしてこれまで格別の前科前歴がないので、同被告人に対しては今回に限り刑の執行を猶予することを相当と認める。

よって主文のとおり判決する。

(裁判官 小林宣雄)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例